ニュージーランド旅行記

2003年1月

/ 会社を退職して、自由に旅行に行きたいと願っていたのが、やっと実現した。行くに当たっては、家内ではなく甥のA君を旅行に誘った。彼は高校を中退して、家にずっと閉じこもっていると聞いていたので、ニュージーランドの大自然を見せてあげたいと思ったからである。

第1日

/ 1月21日朝快晴。昨夜雨が降ったようだが、気持ち良く晴れている。宮崎からやってくるA君を羽田で迎える。定刻に着き、元気な顔を見て安心する。思ったより緊張もなさそう。二人で昼食を羽田で食べて、リムジンバスで成田に向かう。途中少し渋滞があったが、予定より早く成田に着いた。第二ターミナルに着く前に、身分証明書かパスポートの提示を求められたのに、初体験のA君は驚いた様子で、「僕は身分証明書や免許証を持っていないので、パスポートがあって良かったですよ。」と胸をなでおろしていた。時間の余裕を取りすぎたのか、ツアーの集合時刻まで2時間半もあり、退屈。熱くて乾燥していて喉が乾く。ようやく時間がきて、搭乗手続きをすませ、ニュージーランド(以下NZ)の入国カードの書き方の説明を受ける。NZは農業国なので、食物に神経質で、肉野菜はもちろん、薬やあめ玉も申告してくださいとのこと。入国カードを書くのが面倒だからといって、旅行社に頼むと4000円かかるそうで、それはもったいない。シャトル便に乗って、C85の搭乗口に向かう。団体客で一杯。待ちくたびれたが定刻18:30に出発。NZのクライストチャーチまで11時間、機内は狭く乾燥している。用意したペットボトルの水を時々口に含んで、気をまぎらして少し眠ることができた。A君は30分程しか眠れなかったという。

第2日

/ 1月22日やや曇り空の中、クライストチャーチ空港にほぼ予定通り到着。一見冬枯れのような雑草が機内から見えたので、北半球と同じ冬と勘違いしそう。今は乾季で雨が降らないせいらしい。やや緊張した面持ちで出国審査を済ませて、外に出ると、夏だと納得した。日差しが強く、雲が出てくると蓋をしたように蒸し暑い。風が出てくると、涼しく感じる。デニスさんの運転するバスに乗ってクライストチャーチの観光に出発。道路に出ると日本車が多いのに気がつく。左側通行で、日本からの中古車がたくさん輸入されているとのこと。後で聞いた話では全体の80%にもなるそうだ。庭園の盛んな町ということで、ジャニス・タレルさんという一般家庭の庭園を見学。庭園の芝生が綺麗で、その先にはエイボン川という小さな川がゆったりと流れていた。皆でケーキと飲み物をごちそうになった。私はコーヒー、A君は紅茶を頂いた。昨夜の長旅の疲れがとれたような気がした。
 バスで移動してモナ・ベイルという美しい庭園を散歩した後、サイン・オブ・タカヘという高台にある建物を見学。そこからクライストチャーチの市内が一望できた。町の向こうに南太平洋の海が見えた。昼食はエイボン川の見えるレストランでバイキング。チキン、ポテト、ぱらぱらした米などあまりおいしくなく、おまけに狭いのに一苦労。A君もあまり食がすすまず、外に出てしまった。その後、博物館を見学、徒歩で免税店、大聖堂、ホテルへ移動。大聖堂はイギリス国教会で、NZでは少数派。塔の高さは54mもあり、写真に収めるのに一苦労。近くの広場では大道芸をやっていた。クライストチャーチは、最もイギリスらしい町ということであるが、トラムという路面電車が最近復活したらしい。乗ってはみなかったが、のんびりと市内を走る様子は楽しそう。
 夕食はホテルで、サーモンをおいしくいただいた。A君も満足した様子。同じテーブルについた中年夫婦とも話がはずんで、楽しい一時であった。夕食が終わって9時になるのに、まだ明るいので、免税店に行き、ひすいの首飾りをおみやげに買う。受け取りは帰りのオークランド空港で出国審査をした後になるとのこと。間違いないかちょっと心配だが、信用するしかない。

モナベイル
大聖堂
トラム

第3日

/ 1月23日朝6時半、気持ち良く目覚める。半袖にしたが、外に出ると肌寒い。朝食はバイキング。おいしく食べることができた。A君も良く眠れたようで、朝食がすすんだ。今日は1号線を南西に走り、ジェラルディンを経由して、テカポ湖畔、プカキ湖畔を走り、マウントクックまで300km位バスで行く。途中、セスナ遊覧飛行がオプションであるとのことだが、怖いので乗らない。
 NZは人口400万人、2030年をめどに500万人を目指しているため、出産、育児を奨励しており、3-4人の子供の家族が多いとのこと。また移民も年間35-50千人受け入れている。言葉や資格の障害が低いオーストラリア、アメリカに出ていく人が多くて、人口が増えていないらしい。2代続けて女性首相ということだが、人口が少ないので、男女、年齢の区別をしてはいられないという証しか。
 ジェラルディンで休憩をとり、79号線に入る。ここは定年後暮らしている人が増えたらしいが、天気が安定しており、つり、ハイキングができるのがその理由である。NZは一般道路で100km/hまで出せるので、高速道路は少ない。防風林にユーカリの木が使われているが、オーストラリアから持ってきたものである。確かイスラエルでも見た気がする。火事になると油が多いので消えにくい。鹿の放牧も多く見かける。カナダから連れてきて放し飼いしたところ、増え過ぎて駆除したが、その角や肉が輸出されるようになり、15年前から放牧するようになったそうだ。羊よりも付加価値が高い。最近ではダチョウの放牧もされている。
 テカポ湖畔に着いて、石造りの教会を訪ねる。小さな教会の窓から眺める湖と南アルプスの山並は素晴らしい。昼食はこの教会のすぐ近くにあるレストランでサーモン丼をいただく。日本人が作っているのか、味噌汁も出ておいしかった。テカポ湖を離れて細長いプカキ湖畔を走り、マウントクックを目指す。マウントクックの頂上は雲に隠れて見えず、麓だけが見えていた。エベレストに初めて登頂したヒラリー卿はここで訓練を積んだそうだ。今日の目的地ハーミテージホテルに夕方着いた。夕方といっても5時頃だから、まだ全然明るい。8時過ぎまでねばって、部屋のベランダからマウントクックの頂上を撮ることができた。

ちいさな教会
ハーミテージホテル
マウントクック

第4日

/ 今日はフッカーバレーというマウントクックに繋がる氷河の谷をハイキング。こちらに通算10年くらい滞在しているという若い男性のガイドさんが案内して下さった。氷河の溶けた水が勢いよく流れる川を遡ること1時間半。氷河が溶けた白い濁り水には岩粉が含まれる。プカキ湖に注ぎ込むと、岩粉が水面に漂い、屈折の関係で独特の青緑色に見える。この色は世界中どこでも同じだそうである。氷河の先端は土砂に覆われて白くはないが、羊羹を切ったような形で判る。氷河の厚さは100m位で、途中、つり橋もあり、素晴らしい眺めである。A君もすごいとの感想。自生している様々な草花の説明をしてもらったが、書き留められなかった。ただ、シダと乾燥植物が共生しているのには驚かされた。マウントクックの見える地点で昼食。熱い紅茶をガイドさんに入れて頂いた。帰り道、ハーミテージホテルが遠くに見えた。山際に立ち、周りの景観に合わせた色合いで、目立たない上品な感じである。
 午後、今日の宿泊地であるクィーンズタウン(女王の住むのにふさわしい町という意味)に向けて8号線を走る。オマラマで休憩しておいしいフッカーポッキーというアイスクリームを頂く。途中ワナカ湖に立ち寄ったが、小雨で散策もそこそこにバスに引き上げる。閑散としていたが、クリスマスシーズンには3万人も集まるマリンレジャーのできるリゾート地とのこと。夕方リッジスクィーンズタウンホテルに到着。夕食は街中のレストランで摂るために外出したが、長袖のシャツでも寒い。日差しのある昼間は暑いのにである。A君が「異常気象ですね。」というから、「いや、これがNZでは普通らしい。」と答えた。

マウントクックの見える地点で昼食
素晴らしい眺めを背景に

第5日

/ 朝7時にホテルを出発して、今日の目玉、いや私にとってはこの旅行の目玉であるミルフォードサウンズに向かう。片道300kmあるそうだが、直線では80kmしかない。つまり道路が大回りをしているらしい。始めの内はのワカティプ湖(巨人が横たわっているという意味)岸を走る。全長84kmもある巨大な氷河湖である。気圧の変化で北と南の水位が上がったり下がったりするそうだ。ワカティプ湖を離れるとテアナウ湖までしばらく、牧場が続く。行けども行けども、羊と防風林の風景が続く。時々鹿の放牧を見かける。先日皇太子様が宿泊されたというテアナウの町で休憩したが、ハプニングが起こる。バスのファンベルトが切れたらしい。急遽修理のため、他社のバスに分乗することになった。私の乗ったのはリアルジャーニイという会社のバスである。突然の乗客に元の乗客は迷惑顔であったが。南緯45度(稚内が北緯45度)辺りにあるミラー湖で休憩した後しばらくしたら、修理が終わった私たちのバスが追いつき、また元に戻った次第。
 ミルフォードサウンズに着き、1時間半のクルーズ。昼食の弁当を乗船してすぐに食べ、デッキに出て素晴らしい景色を堪能する。フィヨルドの高さ、深さは本当にすごい。落差の有る滝も素晴らしい。A君も「すごい、すごい。」の連発であった。ミルフォードサウンズは年間7000-8000mmの雨が降り、天気に恵まれるのは珍しいそうだ。アザラシも姿を見せて、歓迎してくれた。空港が近くにあり、セスナ機が離着陸していた。このセスナ機に乗って帰るオプションもあり、数人の方が乗られたようだ。もちろん私は怖いので、乗っていない。

クルーズに出発
落差の大きい滝

第6日

/ 朝ホテルを出発して、今日は国内線で南島から北島のオークランドに移動する。クィーンズタウンからクライストチャーチへプロペラ機で飛び、クライストチャーチからオークランドへジェット機で飛ぶ。待ち時間も含めて約3時間で到着。北へ来ただけに日差しが強く、正午で気温は21度。今までと違って、車が多く、人口もオークランド地方だけで120万人、全体の1/3を占める。南太平洋とタスマン海にはさまれ、天然の良港に恵まれた古くからある近代都市である。マウントイーデン、ローズガーデン、ビクトリアマーケット、ハーバーブリッジ、ウォーターフロントを巡る市内観光。オークランドはマウントイーデンのような死火山からなる丘陵が多く、坂の多い街である。ウォーターフロントには、丁度アメリカズカップに向けてたくさんのヨットが世界中から集まって、賑わっていた。夕方最後のホテル、セントラルエアポートに到着。夕食の時、カメラを忘れたが、A君が代わりに取りに行ってくれて助かった。

オークランドのヨットハーバー
セントラルエアポートホテルの中庭

第7日

/ 今日はNZ観光最後の日で、ワイトモ鍾乳洞のつちぼたるを見に、バスで南下する。途中生花の栽培されているラマラマを通る。ピンクのランが日本向けには多いそうだ。ボンベイの丘は赤土に覆われているが、野菜の栽培に適しているそうだ。日本向けにカボチャ、ニンジン、タマネギなどが作られている。ワイカト川はNZで最も長く、タウポ湖から高低差600mでゆっくりと流れる。NZの電力は南島の水力発電が大部分で、北島に供給しているそうだ。原子力発電などは絶対にしない。バスはワイカト川沿いに走り、また牧草地のある酪農地帯をひた走る。あのハイセイコーの母はNZ産とのこと。全体で羊5000万頭、牛800万頭が飼われているそうだ。クリスマスツリーに使われるというノンホークパインツリー(南洋杉)が良く目に付いた。枝が十字に分かれる木で、家に持って帰って植えてみたいものである。
 ワイトモには900個の鍾乳洞があり、3個しか公開されていない。この鍾乳洞につちぼたるが生息している。ほたるのように暗闇で光っているのだが、点滅しているわけではない。強い光や大きいな音にびっくりすると20時間は光らないそうだ。鍾乳洞の天井に一面光を放っていて、小さな舟に乗って見上げながら、鑑賞するという次第。残念ながら写真はとれないのである。昼食はローズランドというレストランでバーベキューランチ。
 NZの最後の夜は南半球で最も高いというスカイタワーで、オークランドの夜景を見ながら、シーフードバイキングを頂いた。ホテルに帰ってから、南十字星を見たいと思って、11時、1時、4時に起きて外に出たが、雲があり星は見えず。昨夜は良く見えたという。残念である。また見に来いということか。
第8日
 朝9時40分、オークランド空港を離陸して、成田に午後4時半に予定通り到着。成田に着陸する前、雲の間を通り抜ける時、虹が見えた。神様からの恵みをたくさん頂いた旅だったと思う。A君も楽しかった由。

ノンホークパインツリー(南洋杉)
スカイタワーからの夜景

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